Roots of monacca

森をサイクルさせる
新しい木のカタチ

monaccaは高知県馬路村生まれの木製品ブランド。
プロダクトデザイナー島村卓実のデザインによって生み出される木と森の可能性にチャレンジし続ける商品。
木の美しさを生かし、ビジネスバッグとしての機能性も追求したこだわりのフォルムは普遍的でありながら先鋭的な様相を持つ。

島村卓実

monacca Designer
TAKUMI SHIMAMURA(Qruz Inc.代表)

島村卓実/プロダクトデザイナー
高知県出身。工業製品に始まり、バスなどの公共機関、ファニチャー、インテリアや小規模住宅、パスタやお酒の食品、地域の製品など多様な企画デザイン開発に携わっている。
http://qurz.jp

monaccaデザイナーインタビュー

人の五感を触発するようなプロダクトになる可能性を感じた

monacca誕生の経緯(きっかけ)は?
高知の知人で、大学の同期がインテリアショップのオーナーをしています。
その友人から、高知の地場産物のムック(雑誌)を作る話があり、馬路村のポン酢製品とエコアス馬路村を見学に行ったのがきっかけです。

薄くスライスされた杉のシートでベニヤ構造を作り、刺身やパン用のトレイ(お皿)を製作していました。馬路村でのポン酢製品の成功は聞いていましたが、高度な木の加工を村の工場でやっている事に驚きました。

村には車も少なく、工場のすぐ近くでさえ、鳥のさえずりと川のせせらぎが聞こえ、澄んだ空気、杉の木の芳醇な香りがとても印象的でした。
工場に入ってトレイを見ると、一つ一つ同じ形をしているのに木目や色は少しずつ異なっているところにも魅かれました。工業製品ではすべてが同じ仕上げでないと製品にはならないからです。
節だらけのものもあれば、半分茶色のトレイもある。こうした一つ一つ違っている事も興味深く拝見させていただきました。
最も驚いたのが、木の単板が三次元成形できている点です。もし、この成形がさらに精度が上がれば、私たちの持っているスマートフォンの筐体も製作可能だからです。一つ一つ異なる木目の上に手触りの良さ、杉の香りもあります。

優しい木の感触や芳醇な香り、目で見て和み、持ってみると非常に軽い、人の五感を触発するプロダクトになる可能性を感じたのです。

自然から生まれた賜物。自然や五感に訴えるものを凝縮したカタチ。

monaccaのコンセプトは?
馬路村の自然、アップサイクル、人の五感、そして都会での木のスタイルです。
馬路村で製作された椅子やテーブルといった家具、花瓶、うちわやマウスパッドなど多くの製品を見て浮かんだ事は、「この村にしかできないオリジナルの製品作り」です。

最所につくったスケッチは工場に初めて行った時に出来上がりました。
この自然や、五感に訴えるものを凝縮していつも感じられるもの、それが木のケースだったのです。
バッグにするとあまりにも機能的すぎる。素材の良さだけで使えるような形をイメージしていました。

都会ではこうした木の製品はあまり目に留まりません。
家具や家に使われるのは当然ですが、それでは五感に訴える製品にはならないと考えたのです。ビジネスシーンや、ファッションで使う事は逆に勇気もいる製品でしょう。
ただし、自然から生まれた賜物ですから、多少奇抜な使い方の方が、却って人々に馬路村や杉の良さをコンセプトとして伝えられると考えました。

製品化への試行錯誤。職人たちの努力がカタチをつくり出す。

monaccaが製品化されるまでの苦労は?また、それらを解決した技術や支援は?
木の部分に関しては、そのまますぐに試作に使えたのですが、木を縫うという縫製作業は全くの手探り状態でした。
縫製工場の多くが中小企業で、もし、木を縫製して壊してしまったら大きな損害になるからです。また、無垢の木は傷がつきやすく、縫製する度にあちらこちらに傷がついてしまいます。
販売はどうするのか、いくらで売るのか、どうやって世間にこの製品を認知してもらうのか。開発と並行して、こうした壁に当りながらの試行錯誤が続きました。
当初、縫製するために個人的にやっている工場にお願いして、簡単な試作は作る事ができましたが、実際量産する段階で歩留まりが悪く、量産できない事が判明したのです。
木は革のように柔らかくないので針が入らないし、一度失敗したらやり直しはできません。職人の技術だけでは対処が難しく、0.5㎜×6層単板が縫えるミシンを改良、製作、傷が付きにくい工程を開発することで対処しました。

成形する木の表面も当初はシワだらけでした。木は樹脂のように伸びる事がないので、三次元成形するとどうしても応力がかかったところが折り重なってしまいます。見た目には割れたようにも見えますが、割れているわけではない。このシワをとる作業はエコアス馬路村の工場が何度も何度も試行錯誤して、ようやくシワの無い、あるいはシワの少ない木の筐体を作り出す事に成功しています。

販売に関して当初は、「ラピタ」という雑誌の通販に協力してもらい、村の取材、工場の取材を通じて販売を開始しました。
また、東京都内で当時開催されていたデザイナーズブロックに参加することで大きな反響を得る事ができました。日本からとうよりむしろ海外からの反響が大きく、素材やデザインの評価をいただいた事が、後のプロジェクトにも大きな影響を与えてくれました。

2005年にイタリア・ミラノで開催された、「ミラノサローネ」の市内展示に参加することで、こうした海外の反響は決定的なものになり、ニューヨーク近代美術館(MoMA)での販売を皮切りに、海外でも少しずつ実績をあげることに成功していきました。
海外へ出展することで、テレビ等の取材が多くなったことはかえって、日本での販売の実績につながっていたとおもいます。

素材の良さや、自然からのメッセージを伝えるデザイン。

monaccaのデザイン面でのこだわりは?
木の仕上げ、塗装、色、ディテールです。
木で作る製品のなかには、塗装で艶々に樹脂塗装をしてしまうものもあります。
ただ、monaccaではいかに、馬路村の自然を皆さんにお伝えできるかが重要なのです。
できるなら、塗装もしたくありません。当初は家具用のオイルで仕上げたものもありました。現在の製品は、杉の木を伐ったときの質感を塗装で表現しています。
マットな塗装で少しだけ光る3分艶程度の塗装です。もともと杉の筐体を加工する前な表面がざらざらしており、ヤスリを掛けて表面をなめらかにしなくてはなりません。
その加工の後でも、自然な風合いがでるようになるまでに、何度も塗装の質にはこだわりました。monaccaは3次元に曲がった木のコーナー部の質感にすべてが凝縮されています。

杉の木の風合いや質感を生かすために、仕上げもコットン(帆布)にこだわりました。
馬路村には「魚梁瀬杉」というブランド杉があり、工場にある切り出された杉の断面も、すこしピンクがかった美しい色をしています。
もっとも、最初に製品化した「bag kaku-プレーン」は、ピンクがかった杉の色、質感に呼応するように、持ち手(ハンドル)にややオレンジの革を使い、木のナチュラルカラーとのコントラストで質感を上げることにも気を遣いました。

monaccaの製品群は、あまりデザインされたという印象は少ないかもしれません。
非常に高度な木の成形技術、こだわった塗装表現、機械を作って迄成功した木の縫製、自然素材を生かすカラーデザインなど、一見しただけでは非常にシンプルでできているにもかかわらず、手で触れ、持つ事でこうしたディテールの良さが感じられる工業製品に仕上がっている事を実感できると思います。
できるだけデザインをしないで、素材の良さや自然からのメッセージを伝えたかったのです。

馬路村の自然の良さをいかしたストーリー性のある杉のブランド。

素材としてのスギの可能性とは?
エコアス馬路村とのmonaccaプロジェクトを通して、杉の間伐材の問題を知る事になりました。国を挙げて推し進めた間伐事業で、ようやくいい材料が手に入る時期になっても、杉の木を大量に消費できないでいるのはもったいないことだと思います。
さらに間伐された木々も雑貨をつくるには素材としても十分魅力的なものです。
馬路村では96%が森林で、日々自然と向き合っています。

一方海外では、木の製品はまるで宝石のように貴重です。産業革命の時代に伐り倒しつくしてしまったせいで、潤沢に木の素材を使えないという現状もあります。
海外で紹介すると、いまでも非常に驚かれますし、まだまだ、チャンスがあることも感じます。

monaccaでは、三次元に曲がった加工に魅力を感じましたが、杉には節の美しさ、柔らかい質感など、まだまだ製品にできる余地はたくさんあると感じています。
東京を始めとする都会は、どこでも緑が少なく、自然との触れ合いを皆さんが求めています。近年のガーデニングの流行や花の市場の活性化、ビルや家の緑化など、ますます多くの場所で杉の素材が活躍できる場所があるとおもいます。
monaccaに限らず馬路村の自然の良さをいかしたストーリー性のある杉のブランドができることを願っています。